Fumiya Tanaka

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順番の小さな違いが結果に大きな影響を与える

September 7, 2016

80枚から150枚近くのバイナルから現場で選曲します。
トラックにはそれぞれキャラクターがありそれぞれ特有のグルーブを持っています。

大きく分けるとリズムの展開をメインに曲を構成するトラック、メロディの展開をメインに曲を構成するトラックとに分けられると思います。
さらに分けるとベースドラムとハイハット、クラップだけのシンプルなものからその他の細かいエレメントが展開するアブストラクトなリズムのもの、スネアやパーカッションが展開するオーガニックなトラック、リズムがメロディの一部となってメロディとのバランスが取れているトラックなどなど言葉にするとキリがありません。

メロディの展開でもシンプルなメジャーコードのものからマイナーコードのもの、複数のメロディが組み合わさったトラックや、メロディであるのか無いのかよく判別出来ないトラックなどなど。

シンセベースが入ってくればベースラインによってグルーブは変わってくるし、サブベースが絡み合ってくれば更にキリがありません。

音色ひとつとってもアナログなものからデジタルなもの、ボイスサンプルやリズム系のサンプル、ピアノやオルガン、ギターやストリングス、音色の違いだけでもキリがありません。

プレイの際にこのようなバイナルの中からどれが良いかを一枚ずつ選曲していくわけですが、例えばリズム主体のAというバイナルが選曲され、その後メロディ主体のBというバイナルを組み合わせた際にその後ベース主体のCを選曲する、というような選択がプレイ中に何度も繰り返されていくのが選曲順で、そのひとつひとつの選曲がプレイ内容全体の構成の出来を左右していきます。

例にあげたAの後にBが選ばれベース主体のCを選曲した場合、別の機会ではAは選曲されず、Aを最初から切り飛ばしてBが先に選ばれる、その後にCではなく別のリズム主体のパーカッシブなトラックDを選ぶという機会があるのが現場で起こることで、その都度選曲の順番を変化することが新たな選曲の組み合わせとして次の展開の順番に影響を及ぼしていきます。

実際はもっと複雑な要素が絡み合って選曲の順番を選択しているのですが、以前に選ばれたバイナルの選曲順や組み合わせに執着することなく、その都度それぞれの現場でしか出来ない順番と選曲にどれだけ向き合えるか、その時の自分のこだわりや先入観をどこまで捨てて順序や組み合わせの変化に柔軟になれるかが鍵です。

最善のレコードを選ぶにはその構えしかなく、同時に仕掛ける構えも必ず必要です。

結果的にはABCDと同じバイナルをプレイしています。
しかし同じバイナルを同じ順番で二つの違う現場でプレイすることは出来ても、通用した現場と別の現場では通用しないのが現場で起こることです。
不思議に感じる人もいますが、場が違うから順番が変わるのは当然であって、場が最優先されます。
順番の変化によって出来る内容の変化は結果に大きく影響を与えるのです。

DJの選曲はお客さんとの共同作業です。
それぞれの現場によってバイナルの順番に工夫を凝らすことは、現場が違うからこそ当たり前の作業です。
そこでしかできない選曲と順番を作っていくことがDJの持っている可能性のひとつで、もし同じ順番でプレイする機会に巡りあったとしても、最初から同じ順番では通じないと考え、別の順序を選ぶ事に積極的に取り組む構えが大切です。
しかしながら違う順番に拘りすぎるのも注意が必要で、何度も書きますが常に今、その場が最優先されなければならないのです。