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毎回のDJにおいて、バリエーションを考える
February 28, 2018
毎回次のプレイの前に選曲をしますが、その際に事前にプレイの方針を決め、持っていくバイナルを決めていきます。
その際にどういった方針でいくか、どういうことをやるか、どこまでの変化に対応出来る準備をするかを考えます。
前回のDJ、セットの準備から今回はどこまで変化をつけようか、その準備の為に今回はどこの都市でやるのか、それはどんなパーティーなのか、以前にそこでプレイしたことがあるのか、ベニューの大きさ、プレイ時間、ラインナップなどを参考にして、現地のお客さんのイメージをざっくりと想定し、自分の調子やアイデアと照らし合わせて今回の方針を固めていきます。
前回の準備のセットからほとんど変化をつけない準備で終わらせて今回に備えることもあるし、前回の準備のセットからバイナルはほとんど選ばず、新しい準備のセットをいちから選曲をしてまとめ、前回とはほとんど違う準備のセットで今回は備えることにすることもあります。
それが実際どうなるかは現地に行ってみてやってみないことには分からないのですが、新しい準備のセットが的を外れていてうまくいかない場合はありますし、失敗してしまうリスクを考えると新しいセットで臨むことに躊躇します。
事前の準備は持っているバイナルをいちから聞き直して選別する骨の折れる作業でもあって、準備の段階で中々結論が出ないこともあり、気が滅入って諦めたくなる時もあります。
前回のDJが良ければいいイメージがあるので、面倒な作業は省略して、前回同様今回も似た準備のセットで今回もやってみようと考えてしまうのは自然なのではないかと思っています。
実際に良い時はその流れに乗っていきたいと思いますし、調子が良ければその流れには逆らいたくないものです。
調子が良い時はそういう判断は有力だし、実際にそれでうまくいくケースは多くあります。
それでもうまくいく保証は最初からありませんから、調子が良いからといって前回と似た準備のセットで失敗しないという保証も無いということだと思っています。
僕達DJは毎回現場が違いますから、実際には現地に行って見て聞いて感じてプレイするしかありません。
現場に合った選曲をその都度何かを考えてみる、それを実践してみることは毎回違う現場を理解することに繋がると共に、自分のプレイのバリエーションを広げることに繋がる有力なアプローチだと考えています。
面倒な準備でもそれを厭わない、安全運転ばかりでなく時にはリスクをとって違ったアプローチをチャレンジしてみる、そのことは結果的にまた次の新たなアイデアやバリエーョンを考える手がかりに繋がっていく近道だと考えています。
感覚とのつきあい方
January 27, 2018
今日は3週間ぶりのDJです。
アムステルダムには年に一度行くか行かないかのペースで呼ばれていて、今回のべニューはおそらく初めての場所だと思います。
行き慣れた場所ではないこともありますが、3週間ぶりのDJですから最初は少し戸惑うと思います。
ターンテーブルやミキサー、バイナルを触ってみて音楽との間合いやお客さんとの波長を図る感覚を取り戻す、このことに少し時間が必要になります。
あまり急がず無理をせず、ゆっくり集中していくことを心がけ、3週間使っていなかったなまっている感覚を取り戻すことに努めます。
週末の金曜日か土曜日、1日だけのDJの場合は自身のエネルギーのペース配分やピークはそのパーティーだけに持っていきます。
1日なのでDJをやりきったかどうかを判断した場合は少し物足りない感覚が残る時もありますが、余力を残しておくことはクオリティの高いパフォーマンスを発揮する、持続するためには大切な要素だと考えています。
この場合の余力を残すというのは全力で取り組まなかったり、持ってるアイデアを出し惜しみしたりする力のことではなく、コンピューターでいうと予備電池、有事の時に対応するための保険みたいな力のことです。
もちろんその力も時には出し切るケースは多々あります。
金曜日と土曜日、連日プレイする週末の場合はそれぞれのパーティーに自身のテンションのピークは持っていき、両日で使い切るペース配分を目指します。
ペース配分の調整は20年以上DJをやってるいまでも難しいですが、時間が過ぎていく中でその時の調子に合わせてギアチェンジをしていきます。
DJが続き過ぎると疲れてはきますが、感覚は時間の経過と共に研ぎ澄まされてくる。
フレッシュな体調で臨む初日のDJより疲れてる2日目のDJの方が自分自身ではしっくりくる感じがよくあるので、連日でプレイする時の方が自分自身は良い調子を掴みやすいと思っています。
毎週末DJを続けることはプレイ感覚を持続させることに繋がります。
ただルーティーンワークに陥りやすい側面を含んでいるので適度なリフレッシュを意識して心がけます。
そうすることで自分の中にある感覚とうまくつきあっていきます。
Beautiful Days
October 10, 2017
構想は2013年からぼんやりと温めていました。
ベルリンに移り住んでからの作品は2013年11月時点で手元に40曲ばかり、制作途中の曲を含めたら60曲近くありました。
実際にベルリン、ヨーロッパをベースに活動していた音楽活動、制作においては、生活全般が作品を作る上でのアイデアやプロセスに大きな変化を与えていたし、作品自体にも自分の音楽性をよりはっきりと形作っていった移り変わりを色濃く反映しているという感想は持っていました。
私が日本を離れてやりたかったことのひとつは作品を残すことであったし、活動の場を求めてベルリンに移り住んだ2010年以降の活動全般を知ってもらうには、その時間と共にあった作品をありのまま聴いてもらうことが自分らしいと考えていました。
決して活動をSNSや言葉で語りたくないということではないのですが、音楽を言葉で語るのは難しい、ただ語りたいという欲求もあります。
普段からDJとは?フロアーにレコードが選ばれるとはどういうことか?という禅問答のような問いと共に現場でDJをする活動があることもあり、実際にどの作品が現場で機能をするのか、音楽的にも意義のある作品を選別、検証することが必要だと考え、沢山の曲をストックすることが出来ていた状況もあり、2013年以降現場でのDJで自分の作品をプレイすることを強く意識するようにしました。
無理の無い自然なペースで進めたかったこともあり、2013年から2014年、2015年と段階的に、ヨーロッパ、南米、日本では自身のパーティーカオス、年末の神戸Troop Cafe、恵比寿Liquid Roomでは集中的に選別、検証を繰り返していたと思います。
グラフィックデザイナーのT氏にバイナルカバー、ラベルのデザインの依頼をしたのが2016年2月。
2015年11月頃には9割の選曲を済ませていましたから、自分のフィルターだけを通して作品を選別する面白みは再認識していました。
バイナルケースの色の組み合わせの方向性が決まったのは2016年12月。
バイナルラベルのデザインの方向性が決まったのは2017年の2月でした。
私のデザインのアイデアはいつも雑然とした説明で、それをいつも聞き入れ受け流し、アイデアの肉付けをしてくれるT氏との共同作業は、日の目を見ることの無いデザインが複数出来る作業でもあります。
その過程の中で作られたデザインのひとつが冒頭のデザインです。
ミスはするもの
June 16, 2017
DJプレイ中はいろんなミスをします。
中でも選曲ミスは特に多いように思います。
ミスをしてしまった時はやってしまったと思いますが、出来るだけミスをしたことは引きずらず、次の展開を考えるように気分を切り替えるよう努めます。
水を飲んだりヘッドフォンを外したり、時間は限られているのでゆっくりもしてられませんが、ひと呼吸入れて間を入れるのは助けになると思ってやっています。
それでも切り替えはなかなか簡単では無く、ミスをしたことでそこまでやってきた流れや構想は宙に浮き、これからどうしていくのか方針を決めないといけなくなっているので、迷いも生じ、更ならミスを誘発しやすくしてしまっています。
そういう時はやけくそになりたくもなりますが、大体は挽回可能な範囲の選曲ミスであることが多いので、落ち着いて対応することに努め、影響を最小限にとどめるようミス以降の展開に向き合い続けます。
ひとつあるのは、ミスをしたことで生まれた可能性にオープンに向き合うことで、構想になかった選曲やアプローチを見つけることが出来る、そういうオープンな気持ちでミス以降も開き直ってプレイすることは、結果的にミスが帳消しになってしまうようなプレイを生み出すことがあります。
人間ですから自分の構想に拘りたくなる思いは理解できます。
ミス以前の展開に執着したくなる思いは、うまくいっていたらいたほど拘りたくなると思います。
ですからミスを挽回してやろうとか、展開を複雑にしてミスを無かったことにしてやろという選曲をどうしてもしてしまいがちになってしまいます。
ミス以降面白くもなんともないプレイにしてしまうこともありますが、開き直って構想になかったプレイを実践してみることは、新しい構想を見つけるきっかけに役に立ったり、次の課題を見つけるきっかけになったりすることがあります。
若い頃はミスが分からず、ミスをしたそのあとの展開をどうにかしてやろうと強引な選曲をしてあとでグダグダ、勢いだけでどうにかこうにかやりきったなんてことは少なくなかったと思います。
傍若無人な選曲は時にイノベーションを生むことがありますが、それも長くは続かないのだなあということも長くやってきたことで分かったことです。
今は細かいミスが分かる。ですから無意識的にミスを嫌い無難な選曲をしてしまっていたり、ノーミスでいくことに拘り過ぎて無意識に面白くない内容にしてしまっていることがあります。
辛い内容でいかないといけないことも多々ありますが、今の感覚で出来る冒険的な選曲を実践することは意識して続けていきたいと思っています。
1年間のギグで満足いくプレイなどなかなか出来ません。
選曲ミスがなく満足のいくプレイもそうあることではありません。
かといって選曲ミスをしなかったからといって、満足出来たプレイが出来たかというとそうでもありません。
選曲ミスをしても結果的に満足のいく内容で終わることもあります。
選曲ミスはプレイの出来に大きく影響しますが、満足行くプレイとはミスだけが評価基準ではないと考えています。
雰囲気が変わってしまうほどのミスはお客さんに簡単に伝わりますが、DJはお客さんとの相互作用、相対的な評価も含むので、自己評価と相対評価をバランスよく保つことで、ミスをミスとして自然に受け入れられるテンションを保てるのではないでしょうか。
いかにミスをしないか、ミスをしてもミスをどのようにしてリカバーしていくか、ミスを活かしていかにまとめていくかはDJの醍醐味のひとつだと考えています。
保留する、タイミングを計る
April 12, 2017
今プレイしようと思ったバイナルをやめて、別のバイナルをプレイすることがあります。
直前での変更になるので、やめたバイナルはターンテーブルの横に置いたまま別のバイナルのミックスを始めます。
こういう時は大体深く集中してる時で、直前まで迷ってる時でもあります。
次にチョイスすることになるだろうなあと思ってたバイナルが、今プレイしたバイナルの展開と現場のムードの変化によってプレイ出来なくなる、今プレイしたバイナルよりも少しだけグルーブが弱かったり、リズムやメロディーが少しだけ違うものが次に合ってくることに気づく、ですからプレイ中はまだ選曲されていないバイナルのプレイ出来るタイミングを常に考えています。
選曲されていないバイナルは、つまりその先のプレイ内容、展開がどうなっていくかの鍵を握っているし、準備したバイナルが出来るだけうまく働くよう、1番効果的な選曲のタイミングを常に計っています。
置きっ放しになったバイナル、プレイ出来るタイミングを逃したなあと思ったバイナルが結果的にそのあとの展開次第でプレイ出来ることがあるのはその為です。
もちろんターンテブルに乗ることもなく直前で手の中からスルリと抜けていくバイナルもあります。
プレイするタイミングは待つというより伺うという感覚に近いので、パスしたバイナルも常に選択の対象内となります。
その判断の手掛かりは今プレイしたバイナルとそこまで一枚ずつ組み合わせて出来てきた選曲の厚みやグルーブ、アイデアの働きが今どの程度なのか、現在の状態をロジカルに判断しながらもうひとつの拠り所となるフロアーとお客さんの反応や雰囲気、次に何を求められているかを瞬時に判断して決めていきます。
それに使う力はほとんど直感ですが、それと同時に今まで選曲してきた流れをおおまかに振り返るダブルチェックもします。
バイナルケースに残されている未だ選曲されていないバイナルをおおまかに見直す作業は、直感プラス網羅する視点を使うことで、判断の精度を上げるためです。
それに使える時間は多くておよそ1分、2分も使えることは稀ですが、どのバイナルが次にマッチするのか、そのタイミングを決めてしまえば、それまでに考えていた他のバイナルの可能性は切り捨てます。
そのバイナルと共にミックスをし始めるタイミングを推し量りながらテンポを合わせる作業を始め、イコライザーのコントロールなども同時に行っていきますが、この時に突然次にあってくるバイナルが別のバイナルだと気づいたり、ひらめいたりすることがあるのです。
これについては未だに自分でも何が起こったのかを説明するのが難しいのですが、大体それは好判断で、逃してしまいがちの保留するタイミングや変化するタイミングを見つけていることが多いです。
気をつけておかなければならないのは、他のバイナルのタイミングを考え過ぎて、プレイしてきた流れから逸脱してしまわないよう意識的になっておく必要はあると思います。
色々な可能性に気づく事で色々な展開をイメージ出来る、その事で色々冒険しようと思ったり、チャレンジしようと思う事は大切な事だと考えています。
しかし冒険し過ぎて本筋から逸れてしまったり、色々な可能性に気づく事で迷いが出てきてチャレンジすることをメインにしてしまう、結果家的に何がやりたかったのかうまく表現できてなく、やってきたことがボケてしまって実力を発揮出来ずに終わることがあったりします。
あくまでも本筋から逸れてしまわないように、目の前の状況や自分のアイデアに集中することが基本です。
パスしたバイナルに執着し過ぎるのもよくありません。
常にフラットな状態でタイミングを計り続けます。
とはいっても私はどちらかというと冒険するのが好きなタイプで、冒険し過ぎて失敗することも少なくありません。
最近は手堅く行くことが多いですが、かといって手堅く行き過ぎてしまって冒険するタイミングを逃すこともあります。
いつやってもその加減は難しく、時には大胆に、両方をバランスよく使い分けられるように心がけています。