Fumiya Tanaka

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現場での対応

April 30, 2016

バイナルケースにもいろいろな種類のものがあります。
約70枚から80枚バイナルが入るスーツケース型のものから、約40枚入るショルダーバッグタイプのもの、100枚近く入るハードケースなど用途によって様々な種類があります。
私の場合は約70枚から80枚入るソフトケースを使用していますが、プレイ時間が90分など短い時間であればバイナルケース1つで対応します。
稀に2ケースのバイナルの量で対応する時がありますが、この場合は事前に現場の情報が分からない時の対応になります。

120分以上のプレイ時間なら2ケースのバイナルの量で対応します。
少なくとも1ケースはフル、1ケースは半分ぐらいのバイナルの枚数があるとよいです。
単純に準備の段階でどうしてもバイナルの枚数が増えていくのですが、アイデアの手がかりを見つける為に必要なバイナルは出来るだけ持っていくようにします。
もちろんそのバイナルを選曲することもよくあります。
結果的に使わないバイナルも出てきます。でもそれはプレイ後に分かることですから結果的に使わなかったバイナルは、それが思考のヒントになって最善の選曲、最善の組み合わせを選択している時がよくあります。
2ケース分のバイナルがあれば選択肢が増える、オプションを増やすのは現場での柔軟な対応に比重を置いているからです。

バイナルケースにどういうレコードが入っているかを把握する量としては2ケースの量のバイナルが適量だと思います。
1人の人間が1度に把握出来る情報量に限りはあって、2ケース以上だと多過ぎる。
選択肢が多すぎると迷いが出てどれもよく思えるものです。
あの時迷ったことが選択ミスの原因だったと後で気づくことがあります。
限られた選択肢でどうやってやりくりするか、現場での対応の醍醐味でもあります。

例外的に360分以上の長い時間プレイする時があります。
この場合は2ケース以上のバイナルが必要になります。
事前の準備段階でオプションを一つか二つ増やし、長い時間に合わせた組み立て、組み合わせるバイナルを現場で対応し工夫します。
アプローチは通常のプレイの時と変わることなく、選曲の組み立てや集中力は、マラソンを走る時のように長い時間一定のスピードを持続出来るような時間の使い方をします。
180分以上プレイする時は同様の対応です。
90分など短いプレイ時間の時の選曲の組み立てや集中力は、短距離を一気に走り抜けるような時間の使い方をします。
現場で方針を一気に固め、高い集中力を一気に使います。

フロアーにレコードが選ばれる

March 31, 2016


調子の良い時はプレイ中に次にかかるレコードが自然に選ばれる、そのチョイスが迷いなく続いていきます。
それが繋がっていきひとつの流れみたいなものが自然に出来上がっていく、その波のようなものに入っていくような感覚を捕まえる、乗っていくような感覚でプレイしています。

そういうレコードに導かれ流れの中によりディープに時間の経過と共に一体化していく、こういう時は後で振り返るとあまりその時のことを細かく憶えてなかったりします。かけたレコードをプレイ後に聞かれても思い出せない時があります。
自分の存在など知らぬ間に忘れて、浮かび上がってくる次のレコードを迷いなくチョイスすることに没頭しています。

ある程度の時間をかけて出来上がっていくものがDJプレイであるし、そのヒントとなる指針はいつもフロアの反応や雰囲気、音楽の中に読み取れると思っています。その状況判断に自分の考えとアイデアを加えて選択するレコードが次にかかるべきレコードとして定義付けられると考えています。

フロアにレコードが選ばれるようにレコードをかける、自然に湧き上がるレコードを選曲するには中盤、終盤の的確な選曲と大胆な組み立てはもちろん大切ですが、プレイ序盤の判断、選曲、組み立てがとても重要だと考えています。その日のプレイをどこまで充実させられるかは序盤で決まってしまうと言っても言い過ぎでないと考えています。

最初にかけるレコードから数枚のレコードをかけるまでの時間帯にどのように取り組むか、力み過ぎず緩過ぎず。
充実した序盤があるからこそアイデアや工夫を活かせる中盤を迎えますから、序盤のミスは充実した中盤、終盤を迎えられるかに大きく影響すると考えています。

ただ例外もあって調子が良ければ序盤にミスがあっても、ミスを取り戻せるだけの力量が調子の良さでミスを上回る。
知らず知らずのうちに中盤の組み立てとアイデアで序盤のミスを取り戻して調子の良い流れに入っていることがあります。
調子の良い時は普段流してしまうような発想に気付くもの。レコードバックの中のレコードが良く見えているかどうかも調子のバロメーターを測るひとつだと考えています。

俯瞰で見る

February 29, 2016

調子の波が悪い時に何をやってもダメな時があります。
私の場合は長い時でおおよそ3年間スランプが続いたことがあります
調子を崩している時は、自分の考えやアイデアに拘り過ぎて視野が狭くなっているもの。
アイデアや状況を俯瞰で見れなくなっています。
抜けたかなあと思ったら抜けてなかったの繰り返し。
調子が良い時はアイデアと状況を俯瞰で見れる瞬間が持続しますから、会場内で音が届いていないのではないか?というところにまで気を配れたような錯覚を起こしながら選曲ができる。
逆に言えばそれが出来ていない時は調子が落ちてきていると判断出来ると思います。
そういう時は大体ひとり相撲を取っていますから、その事に気付くことすら難しい。
ですから夢中になれる別の事をやってみたり、何もしないで休んだり、意識して視点を変えられるようなことをしてみるのもひとつです。

ただ調子の悪い時でも、悪いなりにやり切ることが大切だと思えるのは、その経験は次に調子が悪くなった時に必ず活かせると考えているからです。
調子が悪いからといっていい加減な準備やDJをしていると、スランプから抜けるのは容易ではない。
調子の波に関わらず、一見無駄に思える事をやり続ける事が、後に対処法として自分の経験として身につく。
調子の悪い自分と向き合うのは辛いし、長く続けば続くだけ辛さも長くなりますが、その経験は決して無駄ではなく、もがき苦しむことは次へのステップに必要な大切な肥やし作りになると考えています。

ただ経験が増えることは、色々な事の怖さが分かってくる。
知らず知らずのうちに無難にまとめる力量も上がりますから、ルーティーンな内容のDJやアイデアに陥りやすくなります。
普段から意識的にそうならないよう色々な音楽を聞く事やこまめなバイナルチェックを怠らない、やってみようと思ったアイデアは積極的にチャレンジします。
実際は毎回小さな変化をつけながら、内容やアイデアをアップロードしていく作業になりますが、おでんの煮汁に例えると新しい煮汁となる調味料や出し汁を注ぎ足すような作業だと捉えています。

対応に慣れてくれば調子の波が悪くなる前に未然に防げるようにもなります。
ただこの場合もルーティーンに陥り易くなる傾向にあるので、意識的にそうならないよう普段から意識します。

調子の波

January 22, 2016

DJを続けていると調子の良い時と悪い時があって、調子の波みたいなものがあります。
相性の良い現場やムードというのはあって、それをきっかけに調子を上げることはよくあります。
実際の現場では抜群の音響環境でプレイ出来ることもあれば、機材トラブルに見舞われることも多々あります。
トラブルに奮起し結果的に調子を上げることもありますが、それを境に調子を落とすこともあります。
調子は知らず知らずのうちに崩したり上がったりします。
調子が良い時はそのままで構いませんが、調子を崩している時は何かをしなくてはなりません。
調子を崩している時はその波にあまり囚われず、基本に立ち返る事できっかけを掴むことはよくあります。
今までやってなかったことにチャレンジする、または自分の得意な形でやってみるのもひとつです。
調子の波はギターやベースに例えるとチューニングが気がつかないうちに狂ってるような感覚。
ですからなるべく早くそのことに気づき、ズレの間隔や調子の波の幅を出来るだけ小さくすることで普段の力が発揮出来ると考えています。

ただ何をやってもダメな時はあります。
そういう時は何もしないのもひとつではないでしょうか。

事後の検証

October 20, 2015

DJを終えてやることは22年間で色々と変化がありました。基本的にはあまり変わっていませんが、ここ10数年はプレイ中に選曲ミスしたところ、選曲中に選ばなかったレコードについて、結果的にうまくいった選曲、序盤の構想に改善の余地がなかったか、終盤の展開に工夫の余地がなかったか、足りなかったレコード、必要のなかったレコード、新しいレコードを組み合わせながら検証していきます。
出来るだけ早いタイミングで検証し、出来るだけ早いタイミングで結論を出します。次回以降に活かす為に出来るだけ早いタイミングで気分的に肉体的にリフレッシュする事を心がけますが、ここ数年は終わった事や忘れていい事を出来るだけ意識的に忘れるようにもしています。
自分の中に意識的に空きスペースを作る。そのことは次回に向けて新鮮な気分で臨む為のモチベーションの持続には欠かせないと考えているからです。
どうでもよいことが頭から離れなかったり、肝心な事を忘れてしまっていたりすることは多々ありますが、無理のない検証、自然なリセットを心がけています。